書を食む六畳間

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TUGUMI

[小説][純文学]

吉本ばななは言葉の選択は読者にただならぬイメージの視覚化を植えつける。

どの著作もハッとする文節があり心模様を少し派手目くらいに表現する。

TUGUMI 中央公論社

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

夏、旅館を営む伯母のもとに主人公まりあが行く。旅館には姉妹がいた。姉の陽子と妹のつぐみ。
主に主人公とつぐみの夏のひとときを描いた作品だ。

つぐみは病弱で学校も満足に行けず甘やかされて育った。よく言われる「粗にして野だが卑ではない」 といったところか。
言葉も乱暴だが行動も乱暴、つぐみの悪戯に周囲は手を焼いていた。
ただし容姿端麗で頭は良かった。

相手で態度をころころ変え攻撃的になれば口汚く抉るような言葉を投げかけた。
攻撃は実力行使でも見かけられる。作中落とし穴を掘り懲らしめる場面もある。

そんなつぐみに好意を寄せる男性ができる。主人公視点でつぐみの内面を語る。
心の移り変わりや理解に努める言葉の分析で読者にもつぐみの性格を少しずつ紐解く。

なんとも尖ったつぐみだがページが進むごとにいつしか魅力に変わる。

いいやつではない。粗野で表裏がないならまだしも前述通り裏はある。怒りは烈火の如く。

ただ彼女なりのルールはあるのだろう。


ふんわりした小説かと思いきやどこか影を感じるのも吉本ばなな

文体を楽しみながらつぐみをひたすら観察している小説だ。