書を食む六畳間

ブログ主ほむがおすすめ本や雑記を紹介

ムーン・パレス

[小説][純文学]

ムーン・パレス 新潮社 ポール・オースター

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)

主人公マーコの半生の物語。
マーコの肉親はすでに亡くなっており伯父が面倒を見ていてくれていたが伯父も亡くなる。
天涯孤独の身となったマーコは伯父から譲り受けた1000冊の本を読んではみたがそれも長く続かない。
やがて悲壮で孤独な環境の中で何をするでもなく朽ちていく。
わずかなお金を得るために本を売ってはみたがたかが知れた。
死を思う。

キティ・ウー。中国系留学生の女性に助けられる。

マーコは常に流されている。偶然出会ったウーもそうだし、その後会うことになるエフィングもそうだ。積極的に何か打開することをしなかった。

エフィングは車椅子の老人。作中唯一存在感のある人物だ。そこでマーコはエフィングに本を読み聞かせたり身の回りの世話をすることになる。
時折話す言葉すら印象深い。

マーコへの軽いイライラ感は村上春樹の「ぼく」に似ている。逆に「ぼく」がオースターに似せているのかもしれない。

たまたま、偶然、思いもよらず人と出会い行動する。
朽ちていく過程をありありと書いて読むのもありだと思ったがそうはならず、マーコはエフィングから実の肉親の存在を聞かされる。
当のエフィングもマーコの祖父だったが話すことはなかった。

マーコはたまたま聞いた肉親の話しから探しにいく。

出会いはすべて偶然であるとするなら良い方向にマーコを導いてるのかもしれない。

またマーコのアイデンティティーを確立するならばその行動は決まっていたのかもしれない。

その後も出会いその後も死別する。

着地点は読んでほしいが作品自体は好きだ。

そもそもオースターが好きなので彼と翻訳者の柴田元幸の相性や技量、言葉がマッチしているのはよかった。

モラトリアムから脱却していく様を読む青春小説。

オースターの作品は「シティ・オブ・グラス」「幽霊たち」「孤独の発明」「偶然の音楽」「リヴァイアサン」等。

どれも同じようなテンションで書かれている。