書を食む六畳間

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31歳ガン漂流

[日記][ノンフィクション

]

当時同い年で同じ地元生まれというだけで購入したブログをまとめた本。

31歳ガン漂流 奥山貴宏 ポプラ社

31歳ガン漂流 (ポプラ文庫)

31歳ガン漂流 (ポプラ文庫)

風邪をこじらせたかと病院に往くと余命2年とガン宣告される。

余命云々は後に言われたのだろうが、先天的な要因による肺がんとのこと。

そしてブログに記録していくのだが記事はほぼ趣味に費やしている。

彼のブログは涙を誘わない。憐れみもお涙も全拒否した記事を投稿している。

もともと編集の仕事からフリーランスになった経歴のせいか読ませる文章や多岐にわたる趣味から話題に事欠かない。
バイクが好きでプラモデル、映像、音楽、PCを愛する。

時折病気ネタもある。吐いたらイチゴが消化されず出てきたなど、彼はガンだったのだと気づかせる。

それでも人生を謳歌するなどガンへの反骨で楽しんでる風ではなく、普段より奥山氏はこんな調子なのだろうと思わせるほど悪く言えばやはり他人の日記だ。
しかしプラモデルを組立て、ロックを聴きアルバムを絶賛する、それがとても俗で人間的で「生」の象徴と言ってもいい。

そう一喜一憂してる奥山氏が少し羨ましくもある。

この本は余命宣告の年に刊行された。

2年の余命なので刊行後も存命だ。

そして

32歳ガン漂流 Evolution 牧野出版
33歳ガン漂流 LAST EXIT 牧野出版

と続刊する。

33歳ガン ラスト・イグジットについては死後刊行される。

また本人の念願だった小説も刊行される。

ラスト・イグジットでは最後に吐露する。

死にたくないな。書店で会いたい。本屋でセットで買ってくれ。

もう死期を悟ったのだ。晩年と言ってもまだ30代だが、体を動かすのも苦痛で口頭でブログを書いてもらっていた。
読者は全く気づかす相変わらず映画やアーティスト
の話しを読み、執筆も精力的に進行していると錯覚する。

これだけ俗世間を愛したあまりにも人間的な奥山氏が死ぬだって?

最後の最後だけ空虚感を覚えた。

メディアの取材も受けていた。NHKでも特集が組まれ生前の奥山氏のご尊顔を拝見できる。いつの頃なのかだいぶ痩せていた。
この放送はVHSにて録画をしている。


普段通り過ごすことが死に抗っていたのかもしれないなと思う。普段通りと読者に思われることも。